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「ボルドー・パイン、おおらかなるエスプリ」

フランス南西部のアキテーヌは、沿岸の暖流と偏西風の影響から比較的高い緯度にありながら温暖な気候を特徴とする地域です。ビスケ湾を巡る一帯には海洋性文化が根付き、その気候と相まってヨーロッパを代表するマリンスポーツの、或いはバカンスの地としての表情を持っています。

今でこそ穏やかなサーフタウンのビスケ一帯ですが、そのアキテーヌ(Aquitane)の名が「Aqua」を語幹とするように、かつては湾に寄せる強い海風、大量の砂、塩害、そして海水による浸食により産業や居住においては非常に困難な、いわば海水の沼地の様相であったと伝えられます。

歴史的変化は19世紀後半にもたらされました。ナポレオン・ボナパルトの甥にあたる同Ⅲ世は、世界が国際的な勢力争いの時代に入る折、このアキテーヌの開発を以て貿易上、国防上の利を得るため、厳しい自然条件との折り合いを付けるべく指揮を執りました。その環境への親和性、ぬかるんだ大地から大量の水分を吸い上げ空気中に還す特性、そして防砂林としての高い有効性から、この地に大変革をもたらし得る存在として、海洋性クロマツに分類されるある樹種が白羽の矢を立てられました。

時を経て、現在のアキテーヌは100万ヘクタールという途方もない植林を有し、またそこに根差した豊かな産業が循環する地に生まれ変わっています。それらは計画的に植林・伐採される歴史ある人工林であり、かのナポレオンに端を発するこの海洋性クロマツの純林こそ私たちが直輸入する「ボルドーパイン」の正体なのです。

ボルドーパインは正式名称を「フランス海岸松」(Pin Maritime)と呼び、この地固有の樹種とされています。山の松~一般的な赤松、レッドパインと異なる点として、太く力強い枝振り、灰色の分厚い鎧のような樹皮、そして樹全体を巡る油分の多さが挙げられます。

一般的なレッドパインが伐採されるまでの実に4倍、60年という樹齢に至るまでその巨体を沿岸の風圧にさらされるボルドーパインは、自然治癒を要とする生態的特性から粘りのある強度、また針葉樹としては類を見ないほどの硬さを手に入れます。また樹皮や心材に含まれるポリフェノールは最高レベルの抗酸化作用を持つサプリメントとして製品化され、日本を含む先進各国から注目されています。

ボルドーパインの、20mmという見慣れない厚みには2つの文化的背景が存在します。フランス都心部では地震などのリスクの少なさから、居住に供される建築物も長い歴史を経たものが多く存在します。100年を超える建物には伝統の石積み造りも見られ、また都心ほど各戸の隙間がないほどに密集し、それらは結果的に建物の解体を非常に困難なものにしています。

そうした背景から、フランスでは建物を「壊して建て替える」のではなく、「直して使い継ぐ」ことが一般的になっています。前述の2つの文化的背景のひとつは、まず1世紀以上を経過してハウスダストの問題を生じた作り付けの絨毯を撤去すると、建具との隙間にちょうどこの分厚い、20mmのフローリングがフィットするということです。そしてもうひとつ、さらにそこから1~2世代先、フローリングのリフォームをする際、彼らは「貼り替える」のではなく「削り直す」ことで既存のそれを再生します。

また、力強いテクスチャやコントラスト、さらにはその重厚な経年変化が魅力的なボルドーパインであるからこそ、ある種それに相反する建材としての安定性を確保するために、これほどの厚みは必要不可欠なものだったとも言えるでしょう。

フランス現地では、かつて写真という技術の誕生で廃れかけた絵画文化を復興させたオリエンタルな刺激、即ちパリ万博における浮世絵の渡来にルーツを持つ「ジャポニズム」という美学が存在します。彼らがエスプリ(Esprit=Spirit、精神性)を表現するとき、最も適切な日本語として「ワビ・サビ」を口にすることがあります。自然と調和した海洋性文化、ときには裸足でリビングからビーチへ、そんな力の抜けた彼らが生み出すデザインには、日本の浮造りやちょうな加工に酷似したものまで存在します。古い工場で、手作業で、彼らはいつも楽しそうに考え、魅力的な商品を生み出します。

おおらかなドレスダウンは豊かな精神と、時の変化を楽しむ普遍性をもたらします。かの地の歴史が紡いだ特別頑固な無垢材と、どうぞ次の100年をご一緒に。

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